2003年4月14日(月)
環境大臣 鈴木俊一 殿
「構造改革特別区域法」による「有害鳥獣捕獲」の
許可の条件緩和に反対し、規制の強化を求める要望書
この3月28日付けで、環境省は各都道府県知事宛に「構造改革特別区域法」に基づき、野生鳥獣の捕獲の規制を緩和するとの方針を通知しています。
今回の規制の緩和は、わなの使用の緩和ですが、これは有害鳥獣捕獲における科学的根拠のない乱獲、過剰捕獲、ひいては密猟や違法捕獲を増長させるおそれがあるものであり、ここに反対の意志を表明するものです。
鳥獣保護法では、狩猟においては猟法が定められ、設置の個数が制限され、かつわなに標識を付けることが明記され、違反者には罰則が課せられます。一方、有害鳥獣捕獲においては条文上にこのような制限がなく、改正法第9条5項において、「環境大臣又は都道府県知事が有害鳥獣捕獲の許可に際しては条件を付することができる」という記述にとどまっています。この許可の条件は基本指針に述べられていますが、具体的なものではなく、明文化され公表されている運用上の通知などもありません。
そのため、自治体により、場合によっては、わなの種類にも設置の個数にも制限がなく、標識の装着もしないという事態もあり得ます。このようなことでは、ただでさえ問題となっている過剰捕獲や違法・密猟のわなの摘発においても区別がつかなくなり支障をきたします。また、わなで事故が発生した場合、標識がなければ、責任の所在もつかないことになります。
ツキノワグマやニホンザルの檻による捕獲許可においては、すでに捕獲枠の頭数を捕獲していながら、その後もなお一年中、一定数の捕獲許可が更新され続けている事例が多く見られます。現在の許可制度では、乱獲・違法捕獲を防ぐ仕組みがないことは明らかです。
また、ツキノワグマの生息が少なくなっている西日本の県では、ツキノワグマに対するワナの使用は禁止されていますが、イノシシに対するワナによるツキノワグマの混獲が1年間に二桁台にも達し、地域個体群の存続に重大な問題となっています。
私たちは、次の鳥獣保護法改正において、本法の中に捕獲許可の条件を厳しくかつ明確なものとして定めることを求めますが、それに至る前に、環境省の政令、さもなければ運用通知において、捕獲許可の条件として、以下の事項を明記するように求めます。
現在、このような状況下での「特区」における規制緩和は、一般に狩猟免許を有しない者でも有害捕獲が可能になるといった誤った誤解を与え、改正法の運用上においても支障をきたしかねません。鳥獣による被害対策は、駆除のみによっては解決できず、生息地の回復、群れ管理、追い払いなどの様々な方法を総合的に取り入れた被害防除の手法を採用していく必要があり、かつ、野生鳥獣の保護管理に関する啓発普及、専門家の育成、環境教育といった社会的政策とつなげていくことも、たいへん重要です。
野生鳥獣との共存を図るという基本理念のもと、目先の規制緩和といった姑息な手段ではなく、上記のような総合的かつ包括的な野生鳥獣の保護管理方針を打ち出されるよう、ここに強く要望いたします。
以上
野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
代表世話人:本谷勲(東京農工大名誉教授)
世話人:川道美枝子(京都哺乳類研究会)、草刈秀紀(WWFジャパン)、倉澤七生(イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク)、小島望(北海道自然保護協会)、古南幸弘(日本野鳥の会)、権田雅之(WWFジャパン)、坂元雅行(野生生物保全論研究会)、斉藤敦子(ウルフ・パルス・ジャパン)、鈴木雅子(北限のジュゴンを見守る会)、竹下信雄(鉛弾規制同盟)、タシナ・ワンブリ(生命の輪)、西原省吾(東大大学院保全生態学研究室)野上ふさ子(地球生物会議)、道家哲兵(翻訳で自然保護グループ)、森山まり子(日本熊森協会)、八木典子(日本野鳥の会)、吉田正人(日本自然保護協会)
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