野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
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1999:野生鳥獣保護管理検討会に対する質問書

1999年8月17日

野生鳥獣保護管理検討会
  三浦慎悟  殿    常田邦彦  殿
  赤坂  猛  殿    羽澄俊裕  殿
  小熊  實  殿    羽山伸一  殿
  北島賢一  殿    村上興正  殿
  古南幸弘  殿    森本国昭  殿
  辻岡幹夫  殿    吉田正人  殿
  善哉久治  殿    渡辺邦男  殿
 
環境庁自然保護局長
  松本省藏 殿

  ご説明を求める件

野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
〒169-0073 新宿区百人町2-5-5-205
 tel&fax 03-3365-0146  
        代表世話人:草刈秀紀  


  当ネットワークは、全国各地で野生生物保護の問題に関心を持ち活動している多数の団体・個人が、問題解決へ向けて広く協力する組織です。今回の鳥獣保護法"改正"によって全国的に発生する問題を監視し、その結果をふまえて鳥獣保護法抜本改正を含む野生生物保護の法制度に関する提言を行うことを目的としています。
 
 今回の鳥獣保護法改正に対しては、多くのNGOが多岐に渡る問題点を指摘し、これを廃案にするよう求めました。この声は国会における審議に反映され、国会議員たちからも改正案に疑問が投げかけられ、一時は否決の可能性も高まっていました。それにもかかわらず、改正案自体は可決をみるわけですが、NGOの指摘、国会審議における議論は、今後の課題として、衆参それぞれの付帯決議の形で遺されました。また、それら課題の実現は、法案の修正(付則の追加)によって、改正法施行後3年を目処とする法改正を含む制度見直しによって担保されました。
 つまり、政府は、国会が掲げたもはや無期延期が許されない課題の実現に向けて、改正法の施行運用で可能な限りのことを実行し、その成果をモニタリングし、成果不十分なら3年後に法改正を含む抜本改革に至るということです。
 
 付帯決議に遺された課題に則し、改正法施行の準備として、あるいはそれと平行して準備が進められなければならない事項は次のように整理されます。
 
@ 生息環境の保全に万全を期することを前提に、鳥獣の捕獲及びこれに関連する人間活動を科学的知見に基づき計画的に管理するための効果的な仕組み作り
A 新しい制度=特定鳥獣保護管理計画(以下「特定計画」といいます)が、個体数調整を偏重し結果的に過剰捕獲をもたらすこととならないよう、一方、この制度を生息地の分断等により絶滅が心配される鳥獣の地域個体群を長期的に安定して存続させていくための手段として機能させていくための仕組み作り
B 鳥獣行政の基盤整備(調査研究体制の整備、専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成、鳥獣保護のため生息地の所有者等の協力を得るためのネットワークの構築、関係地方公共団体における鳥獣保護行政の体制強化のため必要な支援等)
C 法整備が必要でかつ今回の法改正に盛り込まれなかった事項(被害補償制度等)の実現に向けて速やかな検討を開始するための具体的手順
 
 環境庁は、改正法の施行運用の準備のため、専門家で構成される「野生鳥獣保護管理検討会」を設置しました。この検討会設置は、専門家の意見を改正法の施行運用に反映させるという付帯決議の要求に従ったものです(衆議院付帯決議第二項、参議員付帯決議第四項参照)。環境庁は、第8次鳥獣保護事業計画の改定基準と特定計画作成要領の策定をその検討課題に掲げ、現在、同検討会により検討が進められています。
 
 検討会の進め方についての疑問
 
 しかし、公開された検討会関連資料から判断する限り、この検討会の進め方には大きな疑問があります。それは、改正法の施行運用のために検討されるべき重大な課題であるにもかかわらず、検討会の検討事項から除外されている事項があることです。すなわち、
 第1に、捕獲許可権限の国・都道府県間の分配(告示において規定される予定)についてです。
 この問題は、「@生息環境の保全に万全を期することを前提に、鳥獣の捕獲及びこれに関連する人間活動を科学的知見に基づき計画的に管理するための効果的な仕組み作り」という課題における最大のポイントの一つです。
 環境庁レッドリストの「絶滅危惧T・U類」、「準絶滅危惧種」及び「地域個体群」は、いずれも、一定の科学的評価に基づき、国レベルでの保護の必要性が明らかになっている種・個体群といえます。その捕獲許可を、国が一元的な科学的評価及び計画の下に一括管理するのか、個別に各地方公共団体に委ねてしまうのかは、「科学的・計画的保護管理」が名ばかりのものかどうかを占う試金石ともいうべき問題です。
 
 第2に、「B鳥獣行政の基盤整備」についてです。
 その多くは、鳥獣保護事業計画の基準の中に書き込まれるべき事項ですが、そのほとんどすべてが、現在検討されている第8次計画改定基準から除外され、平成14年4月策定予定の第9次計画基準の課題として先送りされようとしています。
 しかし、そうなると捕獲許可制度や特定計画制度が、その実効性・適正さを担保する基盤整備抜きに施行運用されていくことになります。さらに、改正法施行後3年目の平成14年9月目処に行われる法改正含みの制度見直しを行おうとする際、第9次計画策定からわずか5ヶ月間しか経過していないこととなり、基盤整備の状況をふまえての制度運用の評価を行うことは不可能となります。つまり、3年後見直しは骨抜きにされてしまいます。
 
 このような検討会のすすめ方は、多数の自然保護団体の期待を裏切るものであるばかりでなく、国会における審議をふまえず、さらには今後鳥獣の保護管理に大きな役割を担う地方公共団体の実情を無視するものです。
 
 そこで、当ネットワークは検討会委員各位及び環境庁自然保護局長に対し、次のとおりご質問させていただきます。
 検討委員各位におかれましては、第8次鳥獣保護事業計画改定基準素案等がパブリック・ヒアリングに付されるまでに、書面にてご説明を賜りたいと存じます。環境庁自然保護局長におかれましては、8月26日開催予定の説明会にてご説明をいただき、仮に足りない点がある場合には改めてお願いを申しあげる所存です。
 十分な時間がないところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

質問事項
 
1.捕獲許可権限の国・都道府県間の分配のあり方について
・この点を検討事項に加えることについてどのようにお考えになるか。その具体的理由もご回答ください。
・環境庁レッドリストの「絶滅危惧T・U類」、「準絶滅危惧種」及び「地域個体群」に掲載されたものすべてを国の権限にかからせることについてどのようにお考えになるか。その具体的理由もご回答ください。
2.鳥獣行政の基盤整備に関し、衆参両付帯決議にあげられた下記の事項について
・下記事項を、a.第8次鳥獣保護事業計画改定基準の項目に盛り込むべきもの、b.第9次計画基準の項目に盛り込むべきもの及びc.事業計画基準以外で対応すべきものに切り分けていただき、c.のカテゴリーに含まれる事項については、それぞれいかなる方法、施策で対応すべきことになるのか、いかなるスケジュールで対応されるべきとお考えかを具体的にお示しください。
・9次計画基準に盛り込むとされた事項(b.)を、8次計画改定基準に盛り込むことができない具体的理由を、各事項それぞれについてご回答ください。

  *( )内の記載は、衆議院、参議院付帯決議の条項の番号を示します。
ア.集中対策期間を設けての鳥獣の生息状況把握(衆・一項、参・一項)、
イ.鳥獣保護区の適切な設定等を通じた野生鳥獣の生息しやすい環境整備(衆・三項、参・二項)、
ウ.野生鳥獣の移動ができる回廊づくりの積極的検討(衆・三項、参・二項)、
エ.防護柵の整備等の被害防除対策の推進(衆・三項、参・二項)、
オ.被害防除に係る対策技術の開発及び普及(衆・三項、参・二項)、
カ.都道府県における早急な調査研究体制の整備(衆・五項)、
キ.都道府県における野生鳥獣保護の専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成(衆・五項、参・二項)、
ク.関係地方公共団体間の調整能力の向上(衆・五項)、
ケ.生息地の所有者、農林業や狩猟、自然保護等関係者などの協力、連携を得るためのネットワークの構築(衆・五項)、
コ.都道府県を越えた広域かつ統一的な鳥獣保護管理を図るための、関係都道府県に対する、積極的な助言、指導及び財政的支援(衆・五項)、
サ.鳥獣保護員の役割強化、大幅増員及び人材育成(衆・六項)、
シ.狩猟者のモラル向上(衆・七項、参・三項)、
ス.鉛弾の規制を含む適切な措置(衆・七項、参・三項)、
セ.関係地方公共団体と協力しての狩猟、駆除の対象となったシカ等の死骸の適切な処理体制の整備(衆・七項、参・三項)、
ソ.関係地方公共団体における鳥獣保護行制の体制強化のため必要な支援(衆・八項、参・六項)、
タ.野生鳥獣の保護を一層明確にした法制度の検討(衆・一〇項、参・八項)、
チ.鳥獣による農林業者の被害救済措置(衆・一〇項、参・八項)、
ツ.公的機関が主導する捕獲体制(衆・一〇項、参・八項)、
テ.野生鳥獣の保護管理のための国と地方の責務の一層の明確化のための具体策(衆・一〇項、参・八項)
 
3.第8次鳥獣保護事業計画改定基準中の捕獲許可の基準(及び特定計画作成要領)に、別紙5項目を盛り込むことについてどのようにお考えになるか。その具体的理由もご回答ください。
 
4.以上1〜3の質問事項に対するご回答に示された考え方を、第8次鳥獣保護事業計画改定基準素案等とともに、一般市民に対するパブリック・ヒアリングの対象とすることについてどのようにお考えになるか。その具体的理由もご回答ください



 (別紙)
 第8次鳥獣保護事業計画改定基準中の捕獲許可の基準(及び特定計画作成要領)に盛り込まれるべき事項
 
1.農林被害を引き起こしているが、同時に生息地の分断等により絶滅が心配されている鳥獣について、(個体群を長期的に安定して存続させていくための手段として)特定計画を都道府県に策定させるための仕組みの導入(衆議院付帯決議第四項、参議員付帯決議第五項参照)

 (仕組みの例)
・特定計画を策定すべき種・個体群を指定して計画策定を促す。
・計画策定に対して経済的インセンティブを与える。
・特定計画を策定すべき種・個体群については「特定鳥獣保護管理計画に定むる所に依り特定鳥獣の数を調整する為」以外の事由に基づく捕獲の許可を行わない扱いとする。

 (コメント)
 特定計画は任意の制度である。
 クマのように全面的な狩猟規制があれば、それを解除するためという特定計画策定のインセンティブがある。しかし、非狩猟獣のサル等(農林被害を引き起こしているが、同時に生息地の分断等により悪影響を受けており、絶滅に瀕する個体群もある)にはそのような前提はない。その結果、特定計画が策定されず従来通りの非科学的・無計画の有害鳥獣駆除が継続される危険が高い。
 
2.特定計画に基づく個体数調整による過剰捕獲を防止するための仕組みの導入(衆議院付帯決議第二項、参議員付帯決議第四項参照)

 (仕組みの例)
・都道府県の、環境庁に対する、計画実施に関する年次報告及び国によるモニタリング・審査・国民への報告制度を設ける(衆議院付帯決議第九項参照)。

 (コメント)
 シカやカモシカ等については、個体数調整の行き過ぎが懸念されるにもかかわらず、特定計画策定に当たって当該都道府県と環境庁との擦り合わせを要求される「協議」対象種から外れる可能性がある。そうなると、過剰捕獲を規制する現行の仕組みとしては、環境庁長官による限定的な「指示」のみとなる。しかし、「指示」の制度は、それを発令するだけの根拠を環境庁に持たせるような仕組みがない限り、画餅に終わる可能性が高い。指示を発動する場合、地方公共団体に「不意打ち的な」あるいは「過剰な」介入になるおそれは常につきまとうが、このような「おそれ」が、環境庁が指示を見合わせる口実になるからである。そこで、一定の情報に基づき一定の手続に基づく検討の結果、指示を出すという仕組みが必要となる。
 
3.環境庁レッドリストの「絶滅危惧T・U類」、「準絶滅危惧種」及び「地域個体群」に掲載されたものの過剰捕獲を防止するための仕組みの導入

 (仕組みの例)
・上記種個体群すべてについて、狩猟の対象としない(衆議院付帯決議第四項参照)ことに加え、原則的に捕獲を許可しない扱いとすること。ただし、現に特定計画が策定された種に対する「特定鳥獣保護管理計画に定むる所に依り特定鳥獣の数を調整する為」の捕獲許可はこの限りでないこととする。(レッドリスト掲載種を対象とする特定計画において、個体数調整の目標値が厳しく限定されるべきことはいうまでもない)。
 
4.都道府県の市町村に対する捕獲許可権限委譲について、捕獲基準において次のように定めること(衆議院付帯決議第八項、参議員付帯決議第六項参照)

(1)環境庁レッドリスト「絶滅危惧T・U類」、「地域個体群」及び「準絶滅危惧種」の一部について都道府県に捕獲許可権限が分配された場合は、その鳥獣の捕獲許可権限は市町村に委譲しないこと。

(2)特定計画の対象とする種については、捕獲許可権限は市町村に委譲しないこと。

   (コメント)
上記レッドリスト掲載の種個体群の捕獲許可権限は、本来、国に分配すべきである(質問事項本文の1参照)。しかし、仮に、その一部が都道府県に分配されてしまった場合には、一元的統一的管理に少しでも資するべく、(1)の措置をとり、都道府県レベルで一括管理させるべきである。特定計画対象種の捕獲許可権限については((2))、都道府県が一元的な科学的評価に基づき自ら一括管理を行うべきことがむしろ当然である。
 
5.捕獲許可の運用の適正化を図るための仕組みの導入

 (仕組みの例)
・捕獲状況の年次報告等を前提とした国の審査制度、及び審査結果を国民へ報告する制度を設ける。(報告制度については、特定計画についてであるが、衆議院付帯決議第九項参照)

 (コメント)
 各自治体における捕獲許可の運用を、捕獲許可基準に適合させるための仕組みは、現行では、環境庁長官による「鳥獣の保護繁殖を図るため緊急の必要があるとき」の「指示」のみである。しかし、「指示」の制度は、それを発令するだけの根拠を環境庁に持たせるような仕組みがない限り、画餅に終わる可能性が高い。指示を発動する場合、地方公共団体に「不意打ち的な」あるいは「過剰な」介入になるおそれは常につきまとうが、このような「おそれ」が、環境庁が「指示」を見合わせる口実になるからである。そこで、一定の情報に基づき一定の手続に基づく検討の結果指示を出すという仕組みが必要となる。

以上

 

 

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