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2004年日本のクマの危機−保護管理対策の推進に向けて(声明)


緊急シンポジウム「いま、クマとの共存を考える」

2004年11月21日

日本のクマの危機−保護管理対策の推進に向けて(声明)


 ニホンツキノワグマは、我が国の生物多様性上、数少ない大型哺乳類であり、また、各地域の森林生態系を象徴するキースピーシーズとしても重要な種です。しかしながら、日本のクマをめぐる生息環境は、近年ますますその厳しさを増しています。開発などによる生息地の分断・縮小や大面積にわたる人工林化、中山間地域の手入れ作業の放棄による森林の質の低下、放置された農作物、果樹など誘因物の存在などによって、その生息環境の悪化と人との軋轢が進んでいます。
 毎年、クマによる農林業被害が各地で発生し、今年のように人的被害も生じております。それに対して駆除に偏った施策がとられ、狩猟と駆除による地域個体群の衰退の危険性は高まっていると言わざるを得ません。
 先般策定された新・生物多様性国家戦略では、「西日本のクマ等については、保護地域制度を活用しつつ生息環境を積極的に改善するなどの措置を講じ、計画的な保護管理を推進します。」と明記されています。しかし現状を見ると、保護地域制度どころか西中国山地における今年度のツキノワグマの捕獲数は156頭にのぼり、年間捕獲数の上限である48頭の3倍以上となってしまいました。
 私たち「野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク」は、このようなツキノワグマをめぐる全国的な現状を危惧して「緊急シンポジウム「いま、クマとの共存を考える」−生かして防ぐクマの害」を開催しました。
 ここに、クマの保護管理対策の推進に向けて、以下の問題点を解決すべく決意表明致します。

1.クマの出没時の適切な対応をはかり、事故の拡大防止(危機管理)と、個体群の安定的な維持のために、各地に野生生物管理専門官を配置することが緊急かつ極めて重要です。

2.鳥獣保護法改正の際の付帯決議(衆議院環境委員会、1999年6月8日)では、「四 ツキノワグマなどの絶滅のおそれのある種または個体群としてレッドデータブックに記載されている鳥獣については原則として狩猟の対象としないこととする」ことが明記されています。ツキノワグマの保護管理は、狩猟に依存した個体数調整ではもはや不可能です。また、狩猟や駆除では被害管理は行えません。早急に、ニホンツキノワグマを狩猟鳥獣から外し、科学的調査に基づく保護管理計画を策定すべきです。

3.上記の保護管理計画においては、個体群の保護とともに、生息地管理および被害対策を位置づけ、国、都道府県、市町村、地域住民、研究者、自然保護NGO等が互いに連携して総合的な取り組みを行えるような仕組みを設けるべきです。

4.クマ生息地域における環境教育を充実させ、クマとの遭遇に地域住民が適切に対処できるように指導し、地域住民と一体となった保護管理の実現をめざす必要があります。

5.クマが生息する各都道府県は、特定鳥獣保護管理計画を任意ではなく、必ず策定する必要があります。特にクマを狩猟の対象や、有害駆除で捕殺している都道府県には義務づけるべきです。

6.春クマ駆除は、被害の有無とは無関係の予察駆除であり、猟期の期間外に行われる狩猟です。このような脱法的狩猟は、計画的保護管理制度に相反し、地域個体群の絶滅に近い状態を招くおそれがあり、早急に禁止すべきです。

7.地域個体群の安定的な維持のみならず各地の個体群が相互に交流できる回廊の設定および保全が必要です。回廊は、山岳地域のみならず平地も含めて検討する必要があります。また遺伝子レベルでの個体群の保護管理も視野に入れて検討する必要があります。

8.クマのように、商業的に利用されることが絶滅の恐れの要因となる種については、広くかつ徹底的に需要と流通をコントロールする必要があります。特に、絶滅寸前の状況にあると考えられる四国、紀伊半島、下北半島、西中国、東中国地方のツキノワグマ個体群に対し、生息現状と遺伝的多様性の把握、そして絶滅回避に向けた、具体的な施策を早急にとることが必要です。

9.クマの胆の取引を監視するためにも、国内のツキノワグマ、ヒグマを種の保存法対象種にして法の上で管理する必要があります。またクマの胆の国内流通の管理と制限を設け、ワシントン条約に違反した場合の罰則の強化を盛り込むべきです。
以上

2004年11月21日



野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
NPO法人日本ツキノワグマ研究所
11月21日 参加者有志

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