鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成十一年六月八日
衆議院環境委員会
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 
一 

 

 緑の国勢調査その他の自然環境に関する調査を徹底するなど、集中対策期間を設け、国全体の鳥獣の生息状況を適切に把握するとともに、都道府県における調査を支援し、これらの成果を野生鳥獣の保護管理施策に積極的に活用すること。また、自然との共生について教育啓発を高めること。 
二 
 
 
 
 

  

 特定鳥獣保護管理計画の策定のための指針等を定めるに当たっては、野生鳥獣保護の専門家及び自然保護団体等の意見を広く聴くとともに、計画の内容が、野生鳥獣の生息地の育成・整備、農林業被害の防除に万全を期すことを優先し、過剰な捕獲をもたらすことがないように定められることを明確にするほか、計画の策定、実行がこれに沿って適切になされるための具体的な手段を示すこと。特に、クマ・サルについては、その生息実態等に関する科学的知見が不十分であることから十分な調査を実施し、万全な農林業被害の防除対策とともに、これら個体群の保護に重点を置いた保護管理計画が策定されるよう示すこと。 
三 

 

 野生鳥獣との共存の森づくりに係る事業、鳥獣保護区の適切な設定等を通じ、野生鳥獣の生息しやすい環境整備を進め、野生鳥獣の移動ができる回廊づくりを積極的に検討するとともに、防護柵の整備等の被害防除対策の推進、被害防除に係る対策技術の開発及び普及を図ること。 

 

 

 ツキノワグマなどの絶滅のおそれのある種または個体群としてレッドデータブックに記載されている鳥獣については原則として狩猟の対象としないこととするとともに、個体数が著しく減少している特定の野生鳥獣の個体群については、関係県において特定鳥獣保護管理計画が積極的に策定されるとともに、これら鳥獣の生息環境の復元が図られるよう、その策定及び実施に対する支援に万全を期すこと。 

 

 

 都道府県における早急な調査研究体制の整備、野生鳥獣保護の専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成、関係地方公共団体間の調整能力の向上等を図るほか、生息地の所有者、農林業や狩猟、自然保護等関係者などの協力、連携を得るためのネットワークの構築など野生鳥獣保護のための基盤整備が行われるとともに、都道府県を越えた広域かつ統一的な鳥獣保護管理が図られるよう、関係都道府県に対し、積極的に助言、指導及び財政的支援を行うこと。

 

 

 科学的・計画的な野生鳥獣の保護管理に当たっては、その保護繁殖は生息地の保護及び整備の充実、個体群の存続を前提とした適正な捕獲の実施が最も効果的であると考えられることから、鳥獣保護区等の管理等を行う鳥獣保護員等の果たす役割が大変重要であることに鑑み、その役割の強化を図るとともに、大幅な増員と人材育成等に努めること。

 

 

 狩猟者が、環境基本計画の基本理念である「自然と人間との共生」を踏まえ、生態系の安定的な維持等に十分な配慮を行うこととなるよう、狩猟者のモラルの向上を図ること。また、狩猟や駆除が事故、水鳥等の鉛中毒等の悪影響が顕著なことから、鉛弾の規制を含む適切な措置を早急に講ずるとともに、関係地方公共団体と協力し、狩猟、駆除の対象となったシカ等の死骸の適切な処理体制の整備を促進すること。 

 

 

 開係地方公共団体における鳥獣保護行政の体制強化のため必要な支援に努めるとともに、都道府県知事の権限に属する普通種等の鳥獣の捕獲等に関する許可に係る事務について、野生鳥獣の保護管理の実施体制の整備状況に応じて適切に市町村に委譲され、円滑に制度の運営が図られるよう、都道府県を指導すること。 

 
 

 

 関係都道府県が特定鳥獣の生息状況、生息地周辺の生態系悪化や農林業被害の状況等に関する調査を十分に行い、その結果について利害関係人等に対し正確な情報提供を行うとともに当該計画の運用または改定に反映させるよう、指導、助言に努めるとともに、国による適切なモニタリングを実施し、それらの結果については、国民及び当委員会等に速やかに報告するとともに、緊急に必要な場合は、関係都道府県又は市町村に対しても迅速かつ的確な指示を行うこと。

 

 本法施行三年後を目途の見直しに向けて、野生鳥獣の保護を一層明確にした法制度、鳥獣による農林業者の被害救済措置、公的機関が主導する捕獲体制の強化、野生鳥獣の保護管理のための国と地方の責務の一層の明確化等の具体策につき早急に検討すること。