野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
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野生生物保護基本法案・要綱 

2003年(平成15年)6月
野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク案

 

<市民提案>

野生生物保護基本法案・要綱

   すべて野生生物は、数十億年に及ぶ地球の生命の進化のたまものであり、それ自体が計り知れない価値を有している。また、人類の健康で豊かな生活は、多様な野生生物から成る生態系を基盤として成り立っている。しかるに、現在、人類の活動により多くの野生生物がその存続を脅かされており、将来にわたって野生生物の存続を図っていくことは緊要な課題となっている。
 我らは、野生生物がかけがえのない財産として我らと我らの子孫に信託されたものであって、共生の理念に基づきこれを保護することが我らに課せられた重要な責務であることを確信して、ここに、この法律を制定する。

第一 目的

 この法律は、野生生物の保護について、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、野生生物の保護に関する施策の基本となる事項を定めること等により、野生生物の保護に関する施策を総合的に推進し、もって生物の多様性の確保に寄与することを通じて、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とするものとすること。

第二 定義

 この法律において「野生生物の保護」とは、野生生物(動物界、植物界及び菌界に属する野生生物をいう。以下同じ。)を殺傷し若しくは損傷すること、野生生物の生息若しくは生育の環境を損なうこと、野生生物をその本来の生息地若しくは生育地でない地域において生息させ若しくは生育させること、その他の野生生物の種、個体群若しくは個体の存続に支障を来す要因を除去し、絶滅のおそれのある野生生物の種を保存し、又は野生生物の生息若しくは生育の環境を保全し、若しくは再生することをいうものとすること。

第三 基本原則等

1 野生生物の保護は、人間に多くの恵沢をもたらす生態系が野生生物を重要な構成要素として成り立っていることにかんがみ、生態系が健全で恵み豊かなものとして将来にわたって維持されるように適切に行われなければならないものとすること。

2 野生生物の保護は、地域における自然環境の特性並びに野生生物の分布状況及び生態を踏まえて、人の活動による野生生物の種(亜種又は変種がある種にあっては、その亜種又は変種とする。以下同じ。)の絶滅の防止、野生生物の個体群の維持及び地域の固有の生態系の保全を旨として、行われなければならないものとすること。

3 野生生物の種、個体群又は個体の存続のためにはその生息又は生育の環境を良好な状態に保持することが重要であることにかんがみ、野生生物の保護は、その種、個体群又は個体の保護又は増殖だけでなく、野生生物の生息地又は生育地の総合的かつ計画的な保全又は再生を図ることにより行われなければならないものとすること。

4 野生生物の保護に当たっては、外来種(人の活動によりその本来の生息地又は生育地でない地域で生息し、又は生育することとなった野生生物の種をいう。以下同じ。)が地域の固有の野生生物の種の存続に支障を及ぼすおそれがあることにかんがみ、外来種が地域の固有の生態系の保全に支障を及ぼすことのないよう、適切な配慮がなされるものとすること。

5 野生動物を捕獲し、又は死に至らしめるに当たっては、できる限りその野生動物に苦痛を与えない方法によってこれらが行われるよう、適切な配慮がなされるものとすること。

第四 国の責務

 国は、第三に定める野生生物の保護についての基本原則(以下「基本原則」という。)にのっとり、野生生物の保護に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。

第五 地方公共団体の責務

 地方公共団体は、基本原則にのっとり、野生生物の保護に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。

第六 事業者の責務

1 事業者は、基本原則にのっとり、土地の形状の変更、木竹の伐採、水面の埋立て、工作物の新設、野生生物に悪影響を及ぼすおそれのある化学物質の散布その他これらに類する事業活動を行うに当たっては、野生生物を適正に保護するために必要な措置を講ずる責務を有するものとすること。

2 野生生物の個体の捕獲、採取、殺傷若しくは損傷(以下2において「捕獲等」という。)又は野生生物の個体若しくはその器官若しくはこれらの加工品(以下2において「個体等」という。)の譲渡し若しくは引渡し(以下2において「譲渡し等」という。)を行う事業者は、基本原則にのっとり、その捕獲等をする個体又はその譲渡し等をする個体等に係る野生生物の種若しくは個体群の維持又はその生息若しくは生育の環境の保全のために必要な措置を講ずる責務を有するものとすること。

3 1及び2に定めるもののほか、事業者は、基本原則にのっとり、その事業活動に関し、野生生物の保護に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する野生生物の保護に関する施策に協力する責務を有するものとすること。

第七 国民の責務

1 国民は、基本原則にのっとり、自らの活動により野生生物の種、個体群又は個体の存続に支障を及ぼすことのないように努める責務を有するものとすること。

2 国民は、基本原則にのっとり、生物の飼養又は栽培を行うに当たっては、その生物を適正に飼養し、又は栽培することにより、その生物が地域の野生生物の種、個体群又は個体の存続に支障を及ぼすことのないように努める責務を有するものとすること。

3 1及び2に定めるもののほか、国民は、基本原則にのっとり、野生生物の保護に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する野生生物の保護に関する施策に協力する責務を有するものとすること。

第八 関係者の協力

 国、地方公共団体、野生生物の保護に関する活動を行う民間の団体その他の関係者は、野生生物の保護に関する施策の総合的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならないものとすること。

第九 野生生物保護週間

1 事業者及び国民の間に広く野生生物の保護についての関心と理解を深めるとともに、積極的に野生生物の保護に関する活動を行う意欲を高めるため、野生生物保護週間を設けるものとすること。

2 野生生物保護週間は、六月五日から同月十一日までとすること。

3 国及び地方公共団体は、野生生物保護週間においてその趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならないものとすること。

第十 法制上の措置等

 政府は、野生生物の保護に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。

第十一 野生生物保護基本計画

1 政府は、野生生物の保護に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、野生生物の保護に関する基本的な計画(以下「野生生物保護基本計画」という。)を定めなければならないものとすること。

2 野生生物保護基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。

 一 野生生物の保護に関する施策についての基本的な方針
 二 野生生物の保護に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
 三 前二号に掲げるもののほか、野生生物の保護に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項3 野生生物保護基本計画は、生物の多様性に関する条約第六条(a)の規定により我が国が策定する国家的な戦略又は計画と整合性のとれたものでなければならないものとすること。

4 中央環境審議会は、野生生物保護基本計画の策定のための具体的な指針について、環境大臣に意見を述べるものとすること。

5 環境大臣は、4の具体的な指針に即して、中央環境審議会の意見を聴いて、野生生物保護基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。

6 環境大臣は、5の野生生物保護基本計画の案を作成しようとするときは、公聴会を開き、広く一般の意見を聴かなければならないものとすること。

7 環境大臣は、5による閣議の決定があったときは、遅滞なく、野生生物保護基本計画を公表しなければならないものとすること。

8 4から7までは、野生生物保護基本計画の変更について準用するものとすること。

第十二 都道府県野生生物保護計画

1 都道府県は、野生生物保護基本指針に即して、当該都道府県の区域における野生生物の保護に関する施策についての基本的な計画(以下「都道府県野生生物保護計画」という。)を定めなければならないものとすること。

2 都道府県野生生物保護計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。

 一 都道府県の区域において総合的かつ長期的に講ずべき野生生物の保護に関する施策の大綱
 二 一に掲げるもののほか、都道府県の区域における野生生物の保護に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 都道府県は、都道府県野生生物保護計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすること。

4 都道府県は、都道府県野生生物保護計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、当該都道府県の区域内の市町村、事業者及び住民にその内容について周知するものとすること。

第十三 国の施策の策定等に当たっての配慮

 国は、野生生物の種、個体群又は個体の存続に支障を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、野生生物の保護について配慮しなければならないものとすること。

第十四 事業の計画段階における環境影響評価の推進

 国は、土地の形状の変更、木竹の伐採、水面の埋立て、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業に関する計画その他これに類するものの立案の段階において、あらかじめその事業に係る野生生物の生息又は生育の環境への影響について自ら適正に調査又は予測をし、その調査又は予測の結果について、広く一般の意見を聴いた上で、野生生物の保護に関し専門的知識を有する者による評価を受け、その評価の結果に基づき、その事業に係る野生生物の保護について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとすること。

第十五 調査研究及び監視等

1 国は、野生生物の生態又はその分布の状況、その生息若しくは生育の状況又はその生息地若しくは生育地の状況(2において「野生生物の生態等」という。)に関する調査、野生生物の生息地又は生育地の再生の手法に関する調査その他の野生生物の保護に関する施策の適切な策定及び実施に必要な調査を実施するものとすること。

2 国は、野生生物の生態等を把握し、並びに野生生物の保護に関する施策を適正に策定し及び実施するため、これらの継続的な監視及び巡視の体制の整備に努めるものとすること。

3 国は、1の調査並びに2の監視及び巡視の結果を野生生物の保護に関する施策に反映させるものとすること。

第十六 教育及び学習の振興並びに人材の育成

1 国は、野生生物の保護に関する施策の適切な推進を図るためには事業者及び国民の理解と協力を得ることが欠くことのできないものであることにかんがみ、野生生物の保護に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実のために必要な措置を講ずるものとすること。

2 国は、野生生物の保護に関する施策の適切な策定及び実施に資するため、野生生物に関する専門的な知識又は技術を有する人材を育成するために必要な措置を講ずるものとすること。

第十七 民間団体等の自発的な活動を促進するための措置

 国は、特定非営利活動法人その他の民間の団体等が自発的に行う野生生物の保護に関する活動を支援するため、野生生物に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとすること。

第十八 国際的協調のための措置

 国は、国境を越えて移動する野生動物、国際的に協力して保護することとされている野生動植物その他の野生生物の保護を国際的協調の下で促進することの重要性にかんがみ、野生生物の保護に関する国際的な連携の確保その他野生生物の保護に関する国際的な相互協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるものとすること。

第十九 国民の請求による野生生物の保護に関する制度についての検討

 国は、野生生物の種、個体群若しくは個体が重大な被害を受け若しくは受けるおそれがあり、又は野生生物の生息若しくは生育の環境が著しく損なわれ若しくは損なわれるおそれがある場合において、国民の請求により当該被害を防止し又は救済する制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

第二十 地方公共団体の施策

1 地方公共団体は、第十三から第十九までの国の施策を勘案し、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じて、野生生物の保護のために必要な施策を、その総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとすること。

2 地方公共団体は、野生生物の保護のために必要な施策の適切な実施のため、野生生物の保護のための基金の設置その他の財政上の措置を講ずるよう努めるものとすること。

第二十一 野生生物保護推進員

1 都道府県知事は、野生生物の保護に熱意と識見を有する者のうちから、野生生物保護推進員を委嘱するものとすること。

2 野生生物保護推進員は、次に掲げる活動を行うものとすること。

 一 野生生物の生息若しくは生育の状況又はその生息地若しくは生育地の状況について調査し、その結果を都道府県知事に報告すること。
 二 野生生物の生息又は生育の状況及びその保護の重要性について住民の理解を深めること。
 三 野生生物の保護のために国又は地方公共団体が行う施策に必要な協力をすること。

3 都道府県知事は、2の一による報告があったときは、遅滞なく、環境大臣に対し、その報告の内容の概要及び当該内容についての都道府県知事の見解を記載した書類を送付しなければならないものとすること。

4 都道府県知事は、野生生物保護推進員が、その職務の遂行に支障があるとき、その職務を怠ったとき、又はこの法律の規定に違反し、その他野生生物保護推進員たるにふさわしくない非行があったときは、これを解嘱することができるものとすること。

第二十二 野生生物専門員

1 野生生物の保護に関する専門的な知識を有する者又は野生生物の保護に関する活動を行う者であって、環境大臣が2により選定するもの(以下「野生生物専門員」という。)は、野生生物保護基本計画に関する第十一の4及び5の事項その他の野生生物の保護に関する事項を議事とする中央環境審議会の会議に出席して意見を述べることができるものとすること。

2 環境大臣は、野生生物の保護に関する研究又は活動の実績等を勘案して適当と認める者を、公募により野生生物専門員に選定するものとすること。

3 この法律に定めるもののほか、野生生物専門員に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。

第二十三 関係行政機関の協力

 環境大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、野生生物の保護に関し、必要な協力を求めることができるものとすること。

第二十四 報告、助言又は勧告

1 環境大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係都道府県知事に対し、野生生物の保護に関し、必要な報告を求めることができるものとすること。

2 環境大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係都道府県知事に対し、野生生物の保護に関する行政又は技術に関し、必要な助言又は勧告をすることができるものとすること。 

野生生物保護基本法の趣旨

 

 

 

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