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特定外来生物法における鳥獣保護法の適用除外に関する要望書

2004年3月9日


  環 境 大 臣   小池 百合子 殿

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案に対する要望書

(財)世界自然保護基金ジャパン
(財)日本自然保護協会
(財)日本野鳥の会
地球生物会議 


 拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃、野生生物の保全にご尽力下さり誠にありがとうございます。
 さてご承知のとおり、我が国は生物多様性条約の加盟国の一員として、国内および世界の生物多様性を保全において、その役割が大いに注目されてきているところです。
 その意味で今般、環境省より「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案」が今国会に上程される運びに到ったことは、誠に時宜を得たものであり、かつ我が国の生物多様性を保全する上において、大変重要な法案であると認識しております。
 しかしながら私どもが法案の内容を拝見するに、いくつかの点で実効性を欠く面が見受けられました。つきましては、下記に改善すべき事項を提案申し上げますので、法案修正等、鋭意ご検討の程お願い申し上げます。
                                                        敬 具



1.政令指定種を評価する科学委員会の設置:特定外来生物の政令指定にあたって、生物の性質に関し専門の学識経験を有する者から構成する科学委員会を設置し、生態系等への被害について評価を行うべきである(第2条関連)

 特定外来生物の政令指定のための評価判定は、当該生物に関する専門知識を持った学識経験者の意見を聞いて主務大臣が行うことになっておりますが、諸外国(ニュージーランド等)の場合、公平な判断を行うため、常設の科学委員会を設置されております。我が国では「種の保存法」において、本法律案と同様、希少野生動植物種の政令指定が行政裁量によって行われていますが、種の指定は順調に進んでいるとはいえず、政令指定種数は、レッド・データ・ブックの絶滅危惧種数のわずか2%にすぎません。
 特定外来生物の指定においては、新たな科学的知見が見つかれば、専門家やNGO等の申し立てにより、すぐに科学委員会が判定できる仕組みとする必要があります。

2.防除計画における合意形成:防除計画を立てるにあたって、関係都道府県だけでなく広く国民の意見を聞き反映させるための合意形成の手続きを盛り込むべきこと(第11条関連)

 現法律案では、防除計画の樹立の過程で国民の意見を反映させる手順について不明確であり、合意形成について明記されておりません。例えば鳥獣保護法の特定鳥獣保護管理計画の樹立について定められているような、審議会や公聴会といった計画の樹立過程における合意形成について明記すべきです。

3.防除事業の効果の判定:防除計画には、防除事業の効果の判定方法を盛りこむべきこと。(第11条関連)

 科学的・計画的、社会経済学的に判断し、順応的な防除事業が行われることが必要です。<指針原則13 撲滅、14封じ込め>

4.防除事業の評価委員会の設置:防除事業の実施結果の科学的評価を行うための評価委員会を設置すべきこと。(第11条関連)

 3〜4は防除計画を科学的かつ順応的に進めていく上で必要不可欠の手順です。<指針原則13 撲滅>

5.鳥獣保護法の適用除外の条件:鳥獣保護法の適用除外を行うための条件を明記すべきこと。(第12条関連)

 現在、多くの都道府県で有害鳥獣捕獲の許可権限が市町村長におりていますが、現場の監視制度もなく、密猟や違法捕獲行為が多発しており、その捕獲が防除なのか、犯罪なのか、判別しようがない現状があります。こうした現状に加えて、特定外来生物防除の名の下に、標識のないワナがいたるところに仕掛けられた場合、錯誤捕獲、混獲、意図的な違法捕獲が入り交じり、在来の野生鳥獣の保護にも大きな支障をきたすことになります。
 外来生物の被害を防ぐという名目で違法行為を横行させない為に、ワナの標識の義務付け、混獲・錯誤捕獲の際の放鳥獣の措置、密猟・違法捕獲の防止の措置を行うべきです。また、違反行為には、罰則を科すべきです。<指針原則15 防除>

6.都道府県による防除計画:都道府県知事が、地域の状況に合わせて特定外来生物を特定し、防除する計画を定めることができるようにすべきこと。(第18条関連)

 南北に長く様々な植生帯にまたがる我が国の地理的特性から、外来生物の引き起こす問題は都道府県ごとに事情が大きく異なります。それに応じて防除事業における地方自治体の果たす役割も重要です。そこで、都道府県知事が当該都道府県の区域内おいて外来生物が著しく生態系等に被害を及ぼし、在来生物の生息状況に影響を及ぼしている事情、その他の事情を勘案して、当該外来生物を特定し、防除するための計画を定めることができるようにすべきです。<指針原則2 3段階のアプローチ>

7.不適正な防除の処罰:防除に関して適正を欠いた場合に認定取り消しを義務とし、また罰則を課すべきこと。(第20条関連)

 5と関連して、不適正な防除行為が行われた際の処罰を明確にしておくべきです。<指針原則10 意図的導入>

8.重要管理地域の設置:国内外来生物を含む全ての外来生物の持ち込みを禁止する「重要管理地域」の設置制度を設けるべきこと。(第3章関連)

 我が国の生物多様性の保全上重要な地域、例えば固有種・稀少種の多く生息する島嶼や自然保護区については、国内外来生物を含む全ての外来生物の持ち込みを禁止する「重要管理地域」を設けることが可能な制度を創設すべきです。
 現法案ではこのような規制の制度は、盛り込まれておらず、自然公園法等の改正によって、特別地域での外来生物放逐規制を行う構想とお聞きしていますが、例えば沖縄北部のやんばる地域のように、世界的に見ても希少な種が多数生息している地域で、自然公園に指定されておらず、しかも様々な外来生物による危機が現に起こり、また見込まれている重要地域も存在しています。
 生物多様性の保全上、特に重要な地域は「重要管理地域」とし、重要管理地域においては「重要管理地域外来生物管理計画」を策定し、外来生物の持ち込み等の規制などをすることができるようにすべきです。<指針原則7 国境でのコントロールと検疫措置>

9.未判定外来生物の判定における予防原則:有害性が完全に排除できない場合は、特定外来種に指定するよう判断すべきこと。(第22条関連)

 生物多様性条約における予防原則「科学的な確実性が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措置をとること」を考え判断すべきです。また、特定外来生物の指定と同様、未判定外来生物の判定においても専門家やNGO等の申し立てにより、すぐに科学委員会が判定できる仕組みとする必要があります。<指針原則1 予防的アプローチ>

10.未判定外来生物の判定期間の延長:当初の期間内に被害の可能性の判定が出来ない場合、6ヶ月の期間を延長できるようにすべきこと。(第22条関連)

 9〜10は未判定外来生物のリスクについて、その生物に関する知見が不足しているために甘い評価が出てしまい、後に大きな被害を出すことを防ぐための予防的な措置として、科学委員会による検討の結果、再判定できる制度が盛り込まれるべきです。<指針原則1 予防的アプローチ>

11.未判定外来生物の申請者の立証責任:未判定外来生物の判定にあたっては、申請者の立証責任を明確にすべきこと。(第22条関連)

 未判定外来生物を特定外来生物に「指定する」か、「規制なし」にするかは、生物多様性を保全する上において、重要な決断となりますが、リスクを評価するためには、海外での事例等や生息地の情報を十分に集めなければなりません。この判定段階で、申請者が受益者負担を負い立証責任を明確にする制度が必要です。<指針原則10 意図的導入>

以上

※参考:生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原則(生物多様性条約第6回締約国会議決議)


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